この記事では、中国特許の分割出願における近年の変化について解説します。
(本記事は、弊社のグループ会社ScienBiziP Intellectual Property Agency(以下:SBPIP)と共同で開催した中国知財ウェビナーの内容から、特に参加者の皆様から関心があったパートを抽出し、再構成したものとなります)
中国の知財政策の概要について解説した記事はこちらです。
中国の実用新案の審査動向

中国では実用新案の実体審査は行われていないが、中国特許庁が2021年に発表した「知的財産権の高品質な発展を推進するための年次作業ガイドライン」では、実用新案の制度改革を推進し、明確な進歩性審査を導入させると言及されています。
これは、中国の実用新案の審査が今後より厳しくなるということを表しており、この点について、今年の実用新案の拒絶通知の件数が増加したことは、SBPIPが取り組んでいる業務の中ではっきりと感じています。
上図の統計データは、SBPIPが過去2年間に取り扱った実用新案の拒絶理由通知の件数を分析したもので、2022年の拒絶理由通知の割合は、2021年に比べて増加しています。
特許出願の質を向上させるために、明確な進歩性を有しない実用新案は拒絶され、中国特許庁は、実用新案登録率を約50%に抑える予定です。
現在、ガイドラインは出されており、今後実用新案の実体審査制度が導入される可能性が高く、実用新案特許の登録は今後ますます難しくなると考えられます。
中国の分割出願の審査動向

次に、分割出願について、近年中国で変化がありました。
分割出願に関して、以前の中国で審査基準は比較的緩く、分割出願が元の出願の範囲を超えない限り、分割出願は許可されていました。
SBPIPが担当した日本企業を例にとると、分割出願の際に、明細書の内容の一部を分割出願の新たなクレームとして分割出願したり、元のクレームを新たなクレームとして組み換えて分割出願したり、クレームを書き換えて分割出願したりすることがよくあります。
しかし、最近、分割出願に関する通知をいくつか受け取りましが、このような分割出願は認められず、意見を述べる機会もなく、中国特許庁によって直接取り下げられました。
また、このような分割出願については、最近の判決もあり、原告は、中国特許庁が発行した「分割出願とみなされる通知」に対して訴訟を起こし、北京知的財産裁判所は原告の請求を却下しました。
近年、中国では分割出願の審査がますます厳しくなっており、次の2つの場合にのみ分割出願が認められます。
- 特許法実施規則第 42 条: 一つの特許出願に二つ以上の発明が含まれる場合、分割出願を申し出ることが出来ます。
- 特許審査基準第 2 章第 6 章:単一性の要件を満たさない場合は、審査官の要求に従って分割出願します。
それ以外の分割出願は認められません。
したがって、分割出願について、今後、日本企業が従来の分割出願の方法をそのまま使用すると、不許可になるリスクが非常に高いと考えられます。
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本記事の執筆者プロフィール

郝家歓氏 (Jiahuan Hao)
ScienBiziP Intellectual Property Agency Co., Ltd.
中国弁理士
国内外の特許出願を数千件対応するなど中国弁理士として知的財産業界で長年経験を積み、中国の政策動向にも明るい。
様々な産業・技術関連の特許情報調査、競合他社報分析、特許リスク調査、特許侵害分析、特許無効証拠調査の経験も有する。