このページは、IPランドスケープの実践方法にはどのようなものがあるか、ということについて理解を深め、実践に活用していきたい方に向けた記事となっております。
IPランドスケープの実践方法
ここでは、IPランドスケープの実践方法について解説していきます。
実践方法の全体像だけでなく、個別の取り組み内容についても順に説明します。
取り組み方法の全体像
まず初めにIPランドスケープの実践方法の全体像は以下のような形となります。
1)仮説・課題の設定
2)特許情報の取得・視覚化
3)非特許情報の取得・視覚化
4)特許情報・非特許情報を組み合わせた分析、仮説・課題に対する結論の導出
5)経営者・事業責任者への提言
上記の2と3については、必ずしも順番に進める必要はありません。
最終提言までの期間を短縮するために、同時進行で取り組むのも1つの方法となります。
仮説・課題の設定
IPランドスケープの全体像を理解した上で、まず取り組むべきは仮説・課題の設定です。
最終的に経営者・事業責任者へ提言する上で、どんな仮説や課題を設定する必要があるかを考えていきます。
最初の一歩としては、経営者・事業責任者に対して、「現状抱えている課題」や「会社の将来像」についてヒアリングする機会を得ることが重要となります。
ヒアリングする項目の例としては以下項目が想定されます。
・会社全体として抱えている課題
・自社が置かれている市場環境の中で抱えている課題
・中長期的に検討している事業構想
・直近で検討している事業構想
・M&Aやアライアンス先として検討している企業
など
ヒアリングで得られた内容が具体的であればあるほど、次に取り組む方向性が明確になります。
そのため、経営者・事業責任者に対して適切なプランを提示するためにも、事前のヒアリングを綿密に行うことが必要となります。
特許情報の取得・視覚化
特許情報の取得・視覚化は基本的には下記流れで行います。
1. 調査範囲(母集団)の設定
2. 分類軸の作成
3. 特許データの分類
4. 特許データのグラフ化、情報解析
次に、各項目について1つずつ解説していきます。
1つ目は、「調査範囲(母集団)の設定」
特定の技術領域の特許情報を分析するには、まずは調査範囲(母集団)を設定する必要があります。
どこまで特許出願を調査するのか定める、極めて重要なステップとなります。
調査範囲の決定は、主として下記4つのポイントを考慮します。
・時間。例えば、出願年、最初の優先年等
・場所。例えば、出願国/地域
・技術分類。例えば、国際特許分類(IPC)やFI、Fターム
・特定のキーワード。技術に関連するキーワードなど
また、特定の競合他社の動向を調査する場合は企業名を条件として追加しても良いし、特定の技術者が出願した特許の動向を調査する場合は発明者名を条件として追加しても良いです。
次に、2つ目「分類軸の作成」
特許情報の分析範囲を決定した後、様々な観点によって母集団を類型化する分類軸を作成します。
一例として、技術、商品、用途という分類軸などを作成します。
IPランドスケープは企業の事業戦略に寄与することを目的としているため、事業戦略の観点から特に注目すべき項目を分類軸として作成することが重要です。
2つ目の「分類軸の作成」で作成した分類軸を用いて、特許分類を行っていきます。
分類を行う際は、主に以下3つの方法があります。
- 目視による分類:担当者が目視で分類の判断を行い、特許を分類するため、精度が比較的高い分類方法です。ただし、作業工数が多くなることが欠点です。
- 分類コード(IPC等)による分類: 技術分類で対応するIPCがある場合は、PCを利用して展開することが可能です。ただし、IPCでは用途の分類などが存在しておらず、会社の事業戦略に対応できない場合があります。その他、日本限定ですがFI、 Fタームなどもあります。
- 検索式による分類:検索式によって機械的に特許を分類することで、分類コードで対応できないところまで分析することができる方法です。ただし、ノイズが存在する可能性は前述2つの方法より高いため、ノイズの少ない検索式を作成するための工夫が必要です。
最後、「特許データのグラフ化、情報解析」
母集団を分析して可視化する際、グラフやチャートなどを利用することが重要となります。グラフの種類として、円グラフ、棒グラフなどに加え、マトリックスチャートを利用することができます。円グラフは異なる分類の割合を可視化する際に利用することができ、棒グラフは、異なる分類の数値の大小や傾向を可視化することができ、マトリックスチャートは異なる二つの観点を掛け合わせた分析を行うことができます。
非特許情報の取得・視覚化
特許情報を用いて開発のロードマップや技術動向、技術水準などを調査することができますが、商品化の動き、競合他社の投資状況や実際のアライアンス先は特許情報だけでは読み取ることができませんので、非特許情報も合わせて調査して分析する必要があります。
非特許情報の取得・視覚化としては、主に「技術テーマに関連するマーケット情報」を取得し、視覚化することとなります。技術テーマに関連するマーケット情報は、例えば以下のようなものがあります。
1. 主要プレイヤー、競合他社情報の取得
2. M&A、投資情報の取得
3. 特許情報解析結果の裏付けとなる情報の取得
次に、それぞれの項目について、1つずつ解説していきます。
まず、「主要プレイヤー、競合他社情報の取得」
特定の技術テーマにおいて市場での主要プレイヤーに対して、その動きをマーケット情報で調査する必要があります。例えばニュースやプレスリリースなどで製品を商品化する動きを調査することや、アニュアルレポートなどで主要プレイヤーのビジネス規模、組織体制などを調査し、競合他社のマーケットでの動きを分析します。
そして、「M&A、投資情報の取得」
競合他社の資本提携先や買収先などを調査することで、どの企業と手を組もうとしているかなどの戦略がわかるようになります。特許分析の結果と照合して、企業が強化しようとしている分野がわかってくる場合もあります。
M&A、投資情報はニュースリリース、アニュアルレポートで取得することができますが、企業自らが開示していない場合は、各種ツールを利用して、情報を取得することが可能です。
最後に、「特許情報解析結果の裏付けとなる情報の取得」
分析を進める上で、特許情報と非特許情報をお互いに行き来しながら取り組むことも必要です。
特許情報の分析結果で推測したものに対して、マーケット情報を用いて検証することが考えられます。例えば、企業が特定の国で多数の出願を行っている場合は、その国の市場を重視していることが推測できますが、当該企業の現地でのマーケット動向(例えば、市場シェア、ビジネス規模や工場建設情報など)を調査し、特許分析結果と照合することで、より明確に企業の動向がわかるようになります。
総合分析した上で結論を導き出す
最初に経営者・事業責任者へのヒアリングを行った上で設定した仮説・課題をもとに、「特許情報の取得・視覚化」「非特許情報の取得・視覚化」ができた後は、それらを総合分析し、結論を導き出します。
結論は、経営者・事業責任者へ提言できる形であり、実現可能なところまで落とし込まれている必要があります。
そのため、総合分析した結論と合わせて実行するためのロードマップや予算感、期待できる成果なども合わせて準備をしていきます。
経営者・事業責任者への提言
経営者・事業責任者へ事前ヒアリングした情報を元に、総合分析した結果を提言します。
提言の前に押さえておくべき前提条件として、経営者・事業責任者の性質を理解することが大切です。
経営者が持つ性質は「全社的な視点での課題の解決」、事業責任者が持つ性質は「事業レベルで抱えている課題の解決」なので、これらを踏まえた上で以下内容を提言することが重要となります。
① 経営者に対しては、全社的な課題の解決に役立てるための「特許・非特許領域を掛け合わせた自社の将来象を具体的にイメージさせてくれるもの」。
② 事業責任者に対しては、事業レベルで抱えている課題を解決するための「特許・非特許領域を掛け合わせた、具体的で実践的な解決策」。
経営者・事業責任者が持つそれぞれの課題に対する解決策を提言するようにしましょう。
以上が、IPランドスケープの実践方法の解説となります。
IPランドスケープを実践する上で効果的なツール
IPランドスケープの実践方法について理解を深めた上で、次に気になるのがIPランドスケープを実践する上で効果的なツールだと思います。
ここからは、特許情報・非特許情報の取得・視覚化に効果的なツールについて解説していきます。
特許情報の取得・視覚化に効果的なツール
一例として、特許情報の検索、可視化、分析が可能なクラリベイト社が提供しているDerwent Innovationがあります。
他にもRWS社のPatBaseやQuestel社のOrbit Intelligence など、様々なツールがあります。
そして、上記のツール以外に弊社が取り扱っている「Patentcloud」があります。
PatentcloudはAIを活用した特許分析プラットフォームであり、全6製品の役割や関連性は以下の図のようになっております。
そして、その中でも下記の3製品はIPランドスケープの分析に効果的だと考えております。
Patent Search
誰でも簡単に検索できる特許検索ツール
Due Diligence
特許ポートフォリオ評価ツール
Patent Vault
特許情報管理・分析を一元的に行えるワークスペース
IPランドスケープに取り組む上で、これらの3製品を活用することで、自由にカスタマイズした分類軸を作成できるので、より自社のニーズに合わせた分析を行うことが可能です。
さらに、自社や競合の特許ポートフォリオを簡単に抽出することができますので、グラフやレポート作成の時間を大幅に短縮することもできます。
ただいま無料トライアルも実施しておりますので、ぜひこの機会に最下部のメールアドレスからお問合せ下さい。
非特許情報の取得・視覚化に効果的なツール
次に、非特許情報の収集や分析に活用できるツールをご紹介します。
世界中の企業情報、業界レポート、市場データなどの情報収集を効率化できるクラウドサービスのSPEEDAや、全国145万社の企業情報や新聞・雑誌記事など、多彩情報を持つビジネスデータベースサービスのG-Searchがあります。
IPランドスケープの実践方法まとめ
最後に、IPランドスケープの実践方法についてまとめておきます。
全体の流れとしては、以下の5つのステップがあります。
1)仮説・課題の設定
2)特許情報の取得・視覚化
3)非特許情報の取得・視覚化
4)特許情報・非特許情報を組み合わせた分析、仮説・課題に対する結論の導出
5)経営者・事業責任者への提言
全体像が分かれば、IPランドスケープの取り組み方も明確になります。
ここまでIPランドスケープの実践方法について、くわしく解説してきました。
弊社ではIPランドスケープに関するソリューションサービスをご提供しております。
IPランドスケープの全体的なご相談だけに限らず、初歩的なパートや部分的な発注のご相談も承っております。
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