この記事では、中国知財戦略を考える上でおさえておくべき今後5年間の方向性の一つ、「1.特許品質の向上」について解説していきます。
前回は、中国全人代と知的財産権の関連性、そして今後5年間の方向性についての全体像をお伝えさせていただきました。
前回の記事については、こちらから読むことができます。
それではここから、具体的に解説していきます。
中国企業の新たな変化について
特許分析ツール「Patentcloud」を活用して、ファーウェイの特許出願傾向を分析したところ、近年中国国内での特許出願件数は減少するものの、特許品質は向上してきているという結果が得られました。
ファーウェイは、2021年6月18日時点で5Gの「標準必須特許(SEP)」保有件数5,035件(※)でシェア世界1位になっており、さらに先進的な知財戦略を推進していますが、すでに「量から質」への転換が進んでいます。
※Patentcloud SEP OmniLyticsで算出 (SEP OmniLyticsについてはこちらから読むことができます)
その具体的な内容につきましては、次の項目をご覧ください。
特許・実用新案出願動向 -中国企業特許の品質向上例
ファーウェイは2017年に中国において5,795件の特許・実用新案を出願しており、中国での順位は2位に位置していました。一方2019年の出願件数は5,218件と減少し、7位まで順位を落としています。
ファーウェイの特許への取り組みが他社と比較して落ち込んでいるという可能性はあるかもしれませんが、さらに下記のグラフをご覧ください。
これはファーウェイの特許品質を表したものですが、特許品質がAAA-Aの特許をAクラスと定義し、B~DをBクラスと定義しています。2017年のAクラス特許は全体の33.9%を占めていましたが、2019年は45.86%と大幅に成長しています。
それと合わせて、Bクラスの特許が66.1%から54.15%に減少し、特に特許品質Dの割合が22.69%から7.49%となり大幅に減少しています。
以上により、ファーウェイは「量から質」への転換をすでに始めているものと考えられます。
中国市場で大手のファーウェイがすでに量から質に舵を切っており、中国では今後他の企業も特許出願の量ではなく、特許の品質を重視するという動きが予想されます。
「1.特許品質の向上」に関する考察のまとめ
今年の全人代では、特許品質の向上が再び取り上げられ、下記の方針が定められました。
1. 一万人ごとに高価値特許保有数12件の目標を策定
2. イノベーションを目的としない特許出願に打撃を与える
3. 知的財産出願補助金の全面撤廃
4. <高価値特許推進のためのガイドライン (2021)>を発行
いままでは中国企業の特許出願は品質が低いとされてきましたが、すでに企業が量から質への転換を進めているのに加え、一連の政策では特許品質の向上を重点にしているため、これから中国特許の品質は向上していくものと思われます。
【日本企業はどう対応すべきか】
中国特許の品質が高くなることから、今後中国特許に対するリスク調査の重要性がより高くなると予想されます。米国に比べ、今まで中国でのリスク調査はそれほど重要視されていませんでしたが、今後は精査することがより重要になってくると思われます。
中国市場における知財分析
弊社は国際的な事業展開をしており、その中でも中国知財分析に強みを持っております。
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